逆位置のコラム 第3回

タロットの書庫

やさしさの果てに、私だけが枯れていた

— R: THE EMPRESS(逆位置 女帝)—


前回の女教皇では、「書かずには壊れてしまう」ような想いを描きました。

今回は、それとは真逆の状態かもしれません。

与えて、尽くして、育んできたはずなのに──  
ふと気づけば、自分だけがカラカラに枯れていた。

THE EMPRESS(女帝)の逆位置。

このカードを見たとき、私はなんとも言えない疲労感に襲われました。  
ああ……これは、あれだ。  **“尽くしすぎた人間”の、最後にたどり着く顔だ。** 

■ 視覚で読む、逆位置EMPRESSの要素

女帝は本来、豊かさ・愛・美・母性──すべてを“包む側”の象徴。
命を育み、愛を注ぎ、自然の恵みとともにあるカードです。

でも、この逆位置の女帝に、そんなイメージは微塵もありませんでした。

座り込んだまま、片手に杖。
かつての豊かさを思わせる装飾は、今やすっかり色褪せ、
足元の実りは萎れ、どこか腐りかけてさえいる。

表情はというと、やる気ゼロ。
というか、やる気どころか「もう立ち上がる気すらない」って顔。


このカードを描くとき、私が意識したのはこんな情景でした:

  • 尽くして、尽くして、燃え尽きた人の顔
  • “育てる”が“義務”に変わった瞬間の空虚
  • 花冠を外す気力もない、終わったパーティーの主催者
  • 「あの人のために」って言い続けて、気づけば自分がいなかった
  • そして今、誰もいない部屋で座っている、たったひとりの女帝

■ それにしても、この表情……

いやもう、この顔、どこかで見たことあるなと思ってたんですが──

深夜のTVでズバズバ斬ってくるあのお方が、
「全部わかってるけど、もうツッコむ気力も湧かない時」の顔に、めちゃくちゃ似てる。

でもそのまなざしには、怒りも毒もないんですよ。
ただ、「ああ、そうですか……はいはい」みたいな、遠い目。

やさしさの成れの果て。
“育む側”でい続けた人が、ふと気づいてしまった、
「自分だけが空っぽだった」っていう静かな衝撃。

あれはもう、包容力でも愛でもなく──虚無です。


■ このカードの象徴・キーワード

  • 【正位置】豊かさ・愛情・育み・母性・美・自然との調和
  • 【逆位置】与えすぎ・自己犠牲・過干渉・枯渇・尽くすことの空虚・報われなさ

■ シーン別リーディング

💘 恋愛

相手に尽くすことが愛だと思ってたけど、気づいたら自分の気持ちがどこにもなかった──なんてこと、ありませんか?

💼 仕事

「人のため」「チームのため」ってやってたのに、
成果だけ吸い取られて、労われるどころか存在感も薄れていく。

🤝 人間関係

やってあげることが“普通”になりすぎて、
誰も「ありがとう」を言わなくなる。
それって、悲しいけど、実際に起こりうることなんです。


■ このカードが伝えたいこと(紫雲の視点)

私、普段はわりとツッコミ役なんですよ。

誰かのボケには全力で突っ込むし、
ボケてない発言にも「今の、聞き捨てならん」と反応してしまう。

でもね──
誰もツッコミを返してくれない飲み会が長時間続くと、人って壊れるんです。

途中までは頑張るんですよ。
「いやそこ!?」「それ言う!?」ってツッコミ入れてた。
でも、2時間、3時間、誰もボケを拾ってくれない空間でずっとそれをやってると……

最終的に、何も言わなくなる。

頭の中ではツッコミ浮かんでるのに、もう声に出す気力が湧かない。
「……はいはい、そうね、そういうこともあるわよね」って感じで、
笑うでも怒るでもなく、ただ口を閉じる。

あの感覚にそっくりなんです、この女帝。

あのときの私は、確実に“尽くしすぎて枯れた側”だったんだと思います。


■ 今日のまとめ

  • 女帝の逆位置は、「与えすぎた人の静かな終着点」
  • 尽くすことが当たり前になったとき、やさしさは枷に変わる
  • 自分を満たさないまま誰かを育てようとすると、
    最後に残るのは“虚無”かもしれない

📌 次回予告

次に登場するのは──

本来は秩序と守護の象徴だった“皇帝”が、
逆位置になったとたん、誰にも逆らわせない“怒りの玉座”に変わってしまった一枚。

支配しすぎた人は、孤独に気づく余裕すらなくなる。

雷が鳴ったのは、世界のせいか。それとも、自分の心の奥だったのか。

次回は、“崩れかけた父性”の物語を、お届けします。


🧙‍♀️ 紫雲 – Shiun

タロットと紫微斗数を中心に活動する占い師。
「カードの絵柄は、心の鏡」をモットーに、ゆるやかに読み解いています。

📷 Instagram:@HarukazeShiun

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